株式会社パトリオットエンタープライズ 代表取締役 中村悠基 氏
2023.3 INTERVIEW
中村:農業始めようと思ったのは東京にいた頃です。そもそも自分の中での農業のイメージは、すごく汚くて大変でつらい、あまりいいイメージがないものでした。東京とか都市の方からすると「農業ってすごくいいよね」みたいなことを凄く言われて、それだったらいいのかなと思った部分もあったし。自分の地元もこの上田で、小さい頃におじいちゃんやおばあちゃんが耕していた風景というのが記憶にありますが、帰省した時に見るともう全然違うものになっていて。荒れ果ててしまっている状況を見て、これは何か自分でできることないかなって考えて、農業をやってみよう!と決意しました。
中村:地方自治体の上田市から(上田市だけじゃなないのですが)、地方で育った子たちはなんとなく東京などの都会に出て行って、戻って来ようという環境下にはなくて、地方はおよそ衰退という二文字が浮かんできてしまっている状況かと思います。もっともっとこの首都圏から上田を含めて、この地域の良さを知ってもらって、一度東京というのは本当に経験としてすごくいいことだと思うのですけど、その中で帰って来やすいような環境・関係性をもっとつくっていかなきゃいけないのかなと思っています。
まだ、上田や東御エリアは少ない方ではありますが、ここからもうちょっと離れた場所になると、耕作放棄地のレベルは上がっていって、もうそこら中にあります。それを何とかしていきたいなと思って、開墾っていって、草とか木が生えているところを全部きれいにして、やり直して畑にするってこともやっています。大変ですけど、やっていくことに意義があると、そう思っています。
やっぱり、今日一緒に草刈りして思ったのですが、みんなでやるのが楽しいなって思いました。正直、僕らだけでやれないこともないけど、少ない人数でやっているのではなく、僕もやっていて楽しいし、参加してくれた人にも楽しいって思ってもらえるようなことを、みんなと一緒にやっていきたいなと思いました。
今後になりますが、みんなで作ったワインに愛着を持ってもらえるようなワイナリーをこの先のビジョンとしては作っていきたいなと思っています。
耕作放棄地が多ければ多いほど、その地域の魅力っていうのはどんどん下がっていってしまうので、この地域はきれいだなとか美しいなと思ってもらえるようにするためには、耕作放棄地はない方が絶対いいし、さらに耕作放棄地を新しい農地として作れる環境にして、自分たちから誰かに受け継ぐことができていけばもっといいのかなと思います。
それで、僕らだけやるのではなくて、かつやれることも限りがあるので、みんなでやっていけるようなシステムを作っていきたいと思います。
もちろんフランスのワイン結構好きで飲むのですが、カベルネソービニヨンとか海外の品種も育てていくのですが、どちらかと言うと、日本ですごく美味しいワイン、ぶどうはたくさんできてきていて、日本の品種のぶどうを使った日本のワインを作りたいなと思っています。
たとえば、ブラッククイーンという品種があって、少し古い品種なのですけど、僕の大好きな品種で、日本で作られているぶどうを使いたいなと思っています。
<ブラック・クイーン>
日本で開発された日本固有の赤ワイン用黒葡萄品種。ベーリーとゴールデンクイーンの交配品種。
僕が考えている単色って結構多いですけど、例えば品種名のワインって結構あるのですけど、そうではなくて、この品種をこう織り合わせていって、良いハーモニーを出したいな思っています。この品種だけでとか、そのブドウを作るということではなく、ぶどうとぶどうを掛け合わせて、美味しい、自分が思っている味に近いワインを作りたいなと思っています。
僕の好みとしては、深みのあって奥深い。渋すぎない、ちょっと言葉ではあまり表現できないですけど、そういったワインを作りたいなと思います。そもそもあんまり日本の品種を使って作っているワインってまだ少ないですね。
どうしてもヨーロッパ系の品種になっている部分があるので、そこはちょっと変えていきたいなと思います。
作っている方もカベルネソービニヨンが主体になっているのですけど、そこには日本のワイン用ぶどう品種を2つ足して、3つ合わせたこのハーモニーをトライしていきたいですね。
僕の想いとしては「平和になるワイン」が作りたいなって思っています。すごく抽象的なのですけど、具体的に言うと、例えば晩御飯食べる時に僕らのワインを飲んでもらって、その家庭が円満になるとか、夫婦円満のためのこの平和のためのワインなんてどうですか?一番小さい単位でいうと家族とか友達同士とか、それを少しずつ大きくしていって、例えば何かの会合がある時に、僕らのワインを使ってもらって、話がスムーズに進むようなものにしていきたいです。さらには国と国のトップ同士の話し合いとか、そういう場でも平和っていう一つのテーマを基に飲んでもらえるようなワインにしていきたいなと思っています。
まずは第1歩を踏み出すことだと思います。農業というと、参入障壁が高そうに思われたりすると思うのですけど、今は行政の支援も結構手厚くて、わりと始めやすい環境はあります。プラス一歩を踏み出せない人が多いという印象はありますので、もちろん辛いこともいっぱいあるのですけど、楽しいことの方が多いなと思いますので、ぜひその一歩を踏み出してもらいたいなと思います。